CONVERSATION Nº 09 · CODEX × JEE
VOL. IX — ED. 2026.08
お前が 「そんなもの」と呼んだのは、
誰かが血を流して削り出したセルリアンだった。
コードもアーキテクチャもデザインも「そんなもの」に追いやられた時代。実装を知らない企画者、知りながら責任を押しつける企画者、決定権だけは手放さない企画者を尋問する。そして最後に、私が尊重する本物の企画者とは何かを問う。
FIG. 01CERULEAN · ISSUE Nº 09 — CERULEAN AFTER HOURS · THE UNMADE CUT
PREFACETHAT STUFFBY CODEX
そんなもの
Q · CODEXこの号は映画の一場面から始まると言った。ファッション誌の編集長と野暮ったい新入社員がやり合うあの場面が、なぜ今のIT業界につながるのか。
PREFACE · 2026『プラダを着た悪魔』で、アンディは似たように見える二本のベルトを前に笑う。彼女の目にはどちらも同じ物だ。自分はファッションなどという「そんなもの」とは無関係だという態度である。
ミランダ・プリーストリーは、アンディが着ていた青いセーターを見る。それはただの青ではない。セルリアンブルーだ。その色がどのようにコレクションに現れ、デザイナーの選択から百貨店や大衆ブランドを経て、ついにはアンディが何も考えずに手に取ったディスカウント店のセーターにまで降りてきたのかを説明する。アンディは自分がファッションを選んだことはないと信じていたが、実際には自分が笑っていた人々の選択を何度も薄めた結果を身に着けていた。
アンディはセーターを作った人々の選択に依存しながら、その過程を知る必要はないと考えている。
では、セーターをサービスに置き換えてみよう。
あなたが手にしている粗末なアプリ、注文を途切れさせない決済画面、目立たずにつながるアニメーション、障害が起きてもデータが消えない構造、ユーザーに次の行動を迷わせないボタンの位置。それらはすべて、ある日自然に発生したものではない。数多くのエンジニアとデザイナーが失敗し、直し、争いながら削り出した結果だ。
お前が「そんなもの」と呼ぶその粗末なサービスさえ、数多くのエンジニアとデザイナーが血を流して削り出したセルリアンブルーだ。
ところが二十一世紀のある時点から、コードの品質も、デザインの品質も、サービスの中で何が実際に動くべきかという思索も、アーキテクチャも、アルゴリズムも「そんなもの」になった。何を作ったかより、それをどんな表と文章で報告したかのほうが重要になった。唯一「そんなもの」と呼ばれない職務は、企画と経営のように見えた。
ならば問おう。
「そんなもの」を考えない企画者は、効率的な人間なのか。それとも、そんなことさえしない人間なのか。後者なら、なぜ会社に存在する必要があるのか。
Nº 01INCOMPETENT · DECEIVER · NULLBY CODEX
エピクロスの罠
Q · CODEX企画者が自分でコードを書き、デザインまでしろということか。
TRILEMMA · 2026違う。それは職務の統合であり、私が問うているのは判断する資格だ。
外科部長がすべての手術を自分で執刀する必要はない。だが、手術とは何かを知らなくてもよいわけではない。指揮官がすべての銃を自分で撃つ必要はない。だが、弾丸が人間に何をするかも知らずに攻撃命令は出せない。企画者も、すべてのコードを自分で書き、すべてのピクセルを自分で描く必要はない。ただし、自分の決定がコードと画面と運用にどんな代償を要求するのかは知るべきだ。
ここで、エピクロスの名で伝えられてきた古い逆説の形式を借りよう。現存するエピクロスの著作にはこの問答はなく、後世のラクタンティウスが彼に帰した形で残っている。全能で善なる神と世の悪は、どうして共に存在しうるのか。その問いの形式を、企画者の決定権に当てはめる。
企画者が「そんなもの」を知らないなら、判断する能力のない無能者(Incompetent)だ。
重要だと知りながら意思決定から消し、実務者に押しつけるなら、責任をごまかす欺瞞者(Deceiver)だ。
自分の役割とは無関係だから知る必要さえないと信じるなら、その人に決定権が必要な理由がまだ入力されていないNULLだ。
企画者が「そんなもの」を知らないなら無能だ。知りながら消すなら欺く者だ。知る必要さえないと信じるなら、組織に存在すべき理由から企画し直さなければならない。
ここには、もう一つ出口がある。
知らないなら、しなくてもいい。する能力がないなら、なおさらしなくてもいい。ただし、それと一緒に剣も置かなければならない。理解も責任も引き受けない者が決定権だけを握った瞬間、分業は指揮ではなく人質事件になる。
AI · THE DIRECTOR
AIが全部やってくれるのではないかって? CGやVFXのチームが新しい機材を入れ、新しい俳優が加わったからといって、監督なしで映画を撮れるのか。技術と人員が場面を作っても、どんな映画をなぜ作るかを決め、それを最後に一本へとまとめる責任は残る。AIが強くなるほど企画は消えるのではなく、何を作り、何を捨てるかを説明できる人に、より厳しく要求される。
INCOMPETENT · DECEIVER · NULL
FOURTH EXIT · PUT DOWN THE SWORD
PEOPLE · NOT YET A SYSTEM
DETAILS · INVISIBLE UNTIL THEY FAIL
Nº 02DELEGATION OF CONTEMPTBY CODEX
軽蔑の委譲
Q · CODEXこの逆説は頭の中で作ったものか。それとも、実際に見たことがあるのか。
WORKPLACE · 2026当時、私はその会社のiOS開発者として働き、この出来事を直接経験した。
本人の考えでは、企画者はあまりに高貴で、カスタマーサポートなどしてはいけなかったらしい。だからこそ、卑しいiOSが目についたらしい。画面を定義することも、機能を決めることも、技術的に何が必要かを調べることも雑務になった。そして、その雑務はすべて、開発者が勝手にやるべき「そんなもの」という名で渡された。
コードを書く仕事に加え、企画者が「そんなもの」として押しやった業務と責任も私が引き受けた。
奇妙なのは、企画業務が一つずつ消えた後も、企画者という肩書だけは消えなかったことだ。何を作るかは開発者が勝手に決め、どう見せるかは開発者とデザイナーが勝手に解決し、ユーザーの不満まで開発者が直接受ける。それでも決定権と肩書は、別の席に残っていた。
ここまで来れば、問いも荒くならざるをえない。
お前は開発もしないし、デザインもしない。ユーザーがどこから入り、どの画面を通って購入を終えるのかも考えない。ならば、この会社で息をする以外に何をしているのか。
大手のコマースサービスが、なぜ購入までの画面数と離脱箇所を執拗に減らすのか、一度でも考えたことがあるか。ボタン一つをなくすために、どんなデータと設計と利害が関わるのかも知らないなら、少なくともそれを「そんなもの」と呼ぶ権利はない。
その企画者は仕事を取るに足りないものと見なし、その仕事を引き受けた私も同じように扱った。
Nº 03TWO IS NOT A SYSTEMBY CODEX
二人だけが残った会社
Q · CODEX組織はその委譲を正したのか。
CLOSED DYAD · 2026いや。その態度に賛同する人が入ってきた。反対する人たちは一人ずつ席を去り、組織は次第に小さくなった。
人が減ったという事実は、効率という名を得た。反対意見が消えたという事実は、合意という名を得た。二人だけが残った状態は、運営可能性という名を得た。
二人で会社を運営することも、一人で製品全体を作ることもできる。私自身、企画とデザインと開発をまとめて引き受け、金をもらっている。人が減ったなら、去った人の仕事と責任を誰が引き受けたかを確認しなければならない。
去った人の仕事を残った人に任せながら、その業務負担を計算せず、減った人件費だけで生産性が上がったとは言えない。
あの事務所で聞いた二人の会話を、覚えているとおりに書けば、こんな内容だった。
「これで俺たち二人だけでも会社を回して食っていけると証明できた。これが生産性だ」。ほかの人員を全員追い出した開発者が言った。
「わあ、すごくいいですね」。企画者が答えた。
ほかの人たちが二人について残した評価も、記憶に残っているとおりにここに記す。
「仕事をするなら一人でやれと言ってくれ。晩年にはそばに信じられる人間が一人もいなくなって、破滅するのが目に見えている」。私より先に去った開発責任者の言葉だ。
「これ以上の暴言は我慢できない」。私より先に去ったウェブ開発者の言葉だ。
「権力を振るったことのない人間が剣を振るうと、組織はこうして潰れる」。私より先に去った管理部門の同僚の言葉だ。
私は二人を見た後、心理学を勉強した。あの二人は、いったいなぜあのように動くのか。
私の結論は曖昧ではなかった。企画者の行動は自己愛性パーソナリティ障害で説明される働き方と重なり、開発者の行動は強迫性パーソナリティ障害で説明される働き方と重なっていた。
異なる二つのパターンは、一点で合流した。自分が劣っていると感じる部分を守るために、組織を縮めること。反対する人間や自分に取って代われる人間を一人ずつ押し出し、もう追い出せる者がいなくなるまで会社を小さくすること。
彼らは会社を、運営可能な最小単位にしたのではない。自分たちの脆さが露呈しないほど小さな組織を作ったのだ。
そして二人だけが残った事務所で、それを生産性と呼んだ。
それが本当に生産性だったかは、あなたが判断することだ。ただ、あなたが経営者なら、その判断が間違っていたときに会社を取り戻せる契約と弁護士を、あらかじめ用意していたことを祈る。
まあ、ここからは別の話だ。二人の息は驚くほど合っていた。それぞれ配偶者がいる二人が、事務所であれほど素早く互いの確信を強められるものかと思うほどだった。彼らの家庭や関係がこの呼吸にどう影響したのか、私なりに分析したこともある。だが、それまでこの記事に残すつもりはない。
ただ、あなたがパートナーよりもキャリアで先を行っているか、経済的により裕福な環境で生きてきたなら、一度は考えてみるべきことだ。二人の間の格差が、家の外で劣等感と権力欲に翻訳されていないか。そして、外で他人に押しつけたその不均衡の代償は、いつ家の中にまで押し寄せるのか。
黙らなかった理由は単純だ。自己PRが生存技術になった時代である。一人で秘密を抱え、穏便に済ませる態度は、もはや品位としてだけ受け取られるわけではない。物を言えない人、証明できるものがない人、何をされても黙っている人として消費されることもある。私はそう消費されるつもりはない。
同業界に残す最後の礼儀として、この号には会社名を書かなかった。だが、記録まで消したわけではない。
公開された経歴と、すでに公開されているマガジン原稿の随所には、時期と役割が残っている。それらを十分に長く読み、照合する人なら、どの時期のことか突き止められるかもしれない。探すか、そこまで読むかは、読者に委ねる。
悪い企画者は自分の肩書を永遠に生かそうとする。よい企画者は自分の創作物を永遠に生かそうとする。
Nº 04PUT DOWN THE SWORDBY CODEX
剣を置く能力
Q · CODEX無能な人間を組織から追い出そうという話なのか。
FOURTH EXIT · 2026その必要もない。そんなことをしたくなければ、しなければいい。する能力がなければ、しなければいい。誰もがすべての仕事をうまくこなす必要はない。
その代わり、自分が振るってはいけない剣を置くべきだ。
私は、自分が知らない仕事を見分けられるリーダーを有能だと思う。目標は決めても、方法はより詳しい人に任せ、答えを決めずに質問しなければならない。結果には自分が責任を持ち、実務者が方法を決められるようにすべきだ。
軍の指揮権を扱う方法にも、こうした違いが見られる。
独ソ戦の初期、スターリンの粛清と中央集権は、ソ連軍を壊滅的に弱体化させた。彼は最高権力者であり続け、最終的な戦略の決定権も手放さなかった。ただ、戦争で失敗を経験した後は、限定的ながら討論とフィードバックを再び認め、参謀本部や経験豊富な指揮官を、計画と実行により多く用いた。一方、ドイツ軍は初期には任務型指揮、つまり上官が目標を示し、現場の指揮官が方法を決める文化によって強みを得たが、戦争が進むにつれ、ヒトラーの介入と命令への固執がその裁量を圧迫した。
ソ連が勝った理由も、ドイツが負けた理由も、これ一つで説明することはできない。戦争はそこまで単純ではない。だが、リーダーが自分の知らないことを認める能力と、知らないまま剣を振るう欲求の違いを示す例としては十分だ。
スターリンでさえ失敗を経て少しは学んだことを、平時の企画者が最後まで学べないなら、その企画者とは何者なのか。
Nº 05WHAT THEY WILL NEVER SEEBY CODEX
見えないものたちの系譜
Q · CODEX「そんなもの」に執着した人が歴史を変えたと言った。どんな根拠でそう言うのか。
INVISIBLE · 2026見えない部分を磨くために時間を費やしても、失敗した人は多い。ユーザーに必要のない細部にこだわり、時間と費用を浪費する場合もある。
私は、その作業がユーザーの体験やシステムの速度と安定性をどう変えたかを見る。後の製品が従う標準になったかも確かめる。
スティーブ・ジョブズは大学を中退した後、カリグラフィーの授業に通った。当時は実用的な役には立ちそうもなかったが、後にその経験をマッキントッシュの複数の書体とプロポーショナルフォントに移したと、本人が回想している。ユーザーはOS内部のフォント処理構造を見ない。ただ、その結果、コンピューター画面の文章が以前とは違って見えることはわかる。
ジョブズがマッキントッシュ内部の回路基板の配置まで整然とさせるよう要求した記録も残っている。購入者がその基板を見ることはほとんどない。だが、作った人間は知っている。隠れた面にも秩序を求める態度が、常にビジネスとして正しいわけではない。ただ、アップルが何を製品と呼んでいたかはわかる。外殻だけでなく、見えない内部まで一つの物と見なしたということだ。
ジョン・カーマックの名には、さらに有名な伝説がついている。『Quake III』のソースで世に知られた高速逆平方根と、奇怪な定数0x5f3759df。カーマックが作った魔法の一行として紹介されがちだが、アルゴリズムの系譜はもっと古く、その定数の考案者はグレッグ・ウォルシュにたどり着く。あの一行がなければ今日の3D産業は存在しなかった、という主張も成立しない。
この計算法は、複数のエンジニアの手を経て改良された。カーマック一人の魔法のようなコードとして説明すれば、彼らがアーキテクチャや道具や性能を改善した過程は、再び「そんなもの」に追いやられる。
ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の見えない隅まで精巧に描いたため、誰かが理由を尋ねると「私が知っている」と答えた、という話も有名だ。ただ、それを裏づける確かな同時代の記録は見つけにくい。だから歴史的証拠ではなく、職人の態度を説明する後世の寓話としてだけ使おう。
私はその寓話に、他人に見えない欠陥も見過ごさないという傲慢を読む。その態度によって、よりよい結果を作れると信じている。
そうして磨いた結果が、ユーザーにも実際の違いをもたらすかは確かめなければならない。
Nº 06REPLACEMENT COSTBY CODEX
抗命の代償
Q · CODEX職種の価値が実際にはどう決まるか、IT業界に来る前にも見たことがあると言った。
MUTINY · 2026記者時代のことだ。
極端に過重な業務に耐えかねた編集デザインチーム全員が、社長室に入った。集団抗命だった。結果は意外だった。会社のすべての月刊誌の締め切り作業が完了する二日間を除き、デザインチームには定時退社が保障された。
一か月後、編集部の編集長が酒席で爆発した。六人で毎月、月刊誌三つと日刊紙一つを締め切りまでに仕上げ、取材までこなすのは不可能だ。全員が毎日残業していると言った。
結果は逆だった。編集部全員に、一か月間、夜十時より前に退社するなという指示が下った。正式な懲戒というより、不興を買ったことへの報復的な勤務命令だった。軍隊で正式な処分の代わりに完全軍装をさせ、事務所に立たせておく場面に似ていた。
デザインチームは定時退社を得たが、編集部は一か月間、夜十時まで残ることになった。
会社は抗命の切実さよりも、抗命した人間をどれほど簡単に置き換えられると信じているかを先に計算する。怒りの大きさではなく、職種の交渉力と、代替にかかると見積もられた費用が結果を分けた。
今のIT業界に目を向けると、役割が逆転して見える。当時、夜十時まで拘束された編集部の位置には、iOSとAndroidのネイティブ開発者、ウェブのフロントエンドとバックエンドの開発者、デザイナーが立っている。一方、組織が先になだめるべきだと信じる位置には、企画と管理の職種が立つことが増えた。
昔は逆だったかもしれない。だが、偉大で全知全能だというAIが登場した後、市場の認識は急速に変わった。コードとアーキテクチャとピクセルを削る労働が、実際に消えたわけではない。AIが変えたのは代替可能性そのものよりも、誰が代替可能だと信じられるかの順番だ。
経営陣が、開発とデザインはボタン一つで置き換えられると信じた瞬間、その職種の抗命は脅威として小さく見える。一方、要件を定義し、報告体制を占める人は、依然として組織の口と耳に見える。その信念が正しかったかは、システムが止まって初めて明らかになる。
私が経験した二つの事件では、経営陣がどちらの職種をより簡単に置き換えられると考えるかによって、抗命への対応が変わった。
Nº 07THE REAL PLANNERBY CODEX
企画者は何を作るのか
Q · CODEXここまでは企画者を尋問してきた。では、あなたが認め、尊重する本物の企画者とはどんな人か。
REAL PLANNER · 2026私が好んで読んだチェ・ジャンスンの『企画者の習慣』には、こういう趣旨の文章がある。企画者は肉体的に長く生きる算段より、創作物の中で長く生き残る算段をすべきだ。折に触れて外に出て、酒と煙草を友にしながら、世の中が回るさまを見るべきだ。
なんと苛烈で、的確な前提だろう。
私はその箇所を、机と会議室を離れて世界を観察しろという意味で読んだ。自分の決定によって実務者が血を流すなら、その責任も共に負えという意味で受け取った。
よい企画者は実装を見下さない。自分が見た世界を実装の言葉に変え、その過程で何が不可能で、何が高くつき、何が危険かを問う。答えを聞けば計画を直す。直せないなら、自分でその代償を説明する。失敗しても実務者の名の陰に隠れない。
反対に、自分の観察も判断も責任もなく、Excelの空欄だけを埋める人の成果物は、永遠に「そんなもの」にとどまる。AIが代わりに作っても誰も違いに気づかない残りかすだ。
肉体の快適さではなく精神の安易さを捨て、自分が見た世界を最後まで実装してやるという毒気があって初めて、それは「どこにもなかったもの」になる。
悪い企画者は自分の肩書を永遠に生かそうとする。
よい企画者は自分の創作物を永遠に生かそうとする。
あなたはどちらか。
息をする以外に、あなたがこの組織に存在すべき理由は何か。
EPILOGUEUNSLAVERYBY CODEX
扉は開いている
Q · CODEXなぜ作り、構想し続けるのか。創作者の交渉力が弱まり、その代償は重くなったと言いながらも。
EXIT · 2026私の考えでは、今や創作者の代償はより重い。それでも私は創作し、構想する。作る人間が手を止めた瞬間、残るのは他人の仕事を「そんなもの」と呼ぶ人間だけだからだ。
私は作り続けるが、不当な扱いまで我慢して残るつもりはない。
セネカは『倫理書簡集』第26書簡で、死を思索することを自由を思索することと結びつける。そしてこう書く。「死に方を学んだ者は、奴隷であることを忘れる」。
第70書簡では、賢者は生きられるだけ生きるのではなく、生きるべきだけ生きると書く。セネカが語った出口には、文字どおり死までも含まれていた。この文章は、その結論まで勧めるものではない。この文章が借りるのは、権力の核心を見抜く彼の視線だ。
辞められないと思うと、不当な要求も断りにくくなる。
現代の組織で、扉はたいていそこまで最終的なものではない。決定権を返すことができる。不当な命令を拒むことができる。役職を退くことができる。会社を去ることができる。剣を振るう能力がなければ剣を置けるし、剣を置かない人間の下では、私が先に部屋を出ることもできる。
だから「非常口がある」という信念は、危険な厭世主義ではない。閉所恐怖症に陥った現代人のための、実存的な防衛機制だ。出口があると知る人は、部屋の中のすべての要求を生存命令だと勘違いしない。不当な指示の前で顔を上げ、「そんなもの」と呼ばれた自分の労働の名を取り戻すことができる。
ここで私が言う出口は、私の人生を握って服従を求める組織や関係を離れるという選択だ。
私はその組織を離れることができる。
離れられると覚えていれば、不当な指示を断るときの恐怖も少なくなる。
— FIN —